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関口 哲弘; 関口 広美*; 小尾 欣一*; 田中 健一郎*
J. Phys., IV, 7, p.505 - 506, 1997/00
ギ酸メチル吸着系の炭素(C)および酸素(O)K殻励起により起こる光刺激イオン脱離反応をパルス放射光を利用した飛行時間質量分析(TOF)法により調べた。CおよびO 1s内殻電子励起によりH,D,CH,O,OCH(n=0~3)などの脱離イオン種がTOFスペクトル上で帰属された。また、これらのイオン収量の励起波長依存性を定量的に測定した結果、いくつかの共鳴内殻励起で励起状態における電子構造を顕著に反映して脱離収量が増加することがわかった。脱離機構を更に調べるため、脱離イオン同士での光イオン-光イオン-コインシデンス(PIPICO)実験を試みた。その結果(H-CH),n=0~2コインシデンス・ピークが観測され、またCHイオン収量の励起スペクトルと一致した。このことから、脱離イオン収量の共鳴励起増強効果のモデルとして表面上での多価イオン生成が関与していることが示された。
関口 広美*; 関口 哲弘
Surface Science, 390(1-3), p.214 - 218, 1997/00
被引用回数:9 パーセンタイル:53.09(Chemistry, Physical)我々は炭素原子一つを持つギ酸吸着系(DCOO/Si)において、炭素K殻から3種類の異なる空軌道への遷移の結果、分子軌道が関与した結合が切断されて生じる脱離フラグメントの収量が増加することを既に報告した。本研究においては高分解能軟X線分光器を用いることにより酸素内殻励起領域においてDCOO吸着種の二種類の酸素を選択的に内殻励起し、それぞれの励起で起こる脱離反応収量の違いを調べた。ヒドロキシ酸素(-O-)の励起によりCDOイオン収量が増加し、カルボニル酸素(C=O)の励起ではCD収量が増加した。このことから非局在効果が大きいと考えられる電子をもつ有機分子吸着系においても選択励起された原子の近傍で優先的に結合切断及び脱離が起こることが明らかにされた。また、基板との相互作用が弱いカルボニル酸素励起の方がO+脱離が顕著であり、相互作用が強いヒドロキシ酸素の励起では脱離が顕著でないといった表面特有効果が見い出された。
関口 哲弘; 関口 広美*
Atomic Collision Research in Japan, 0(22), p.89 - 90, 1996/00
ギ酸メチル分子のいくつかの内殻励起状態における波動関数が各官能基や結合に局在しているという研究背景を元に、高エネルギー分解能の軟X線分光器により内殻励起状態を選択励起することにより「結合を選択した光化学反応」の可能性を検討した。実験手法としてはパルス放射光を用い、同位体置換ギ酸メチルの吸着系から脱離するイオン種を飛行時間質量分析法により観測した。各イオン収量の励起スペクトルは吸収スペクトルとかなり異なり、イオン脱離確率が初期内殻励起にかなり依存していることが見出された。特にDとCHイオン脱離確率が大きく増加した励起はC 1s(CH)(O-CH)とC 1s(C=O)(C-D)といった反結合性軌道への電子遷移による結果であると解釈された。この結果は励起エネルギーを変化させることにより分子内の反応部位(サイト)を任意に選択することができる可能性があることを示したものである。